2012/06/04

パリの和菓子屋さん 『和楽』




今回のパリ旅行はお菓子めぐりを目的としていないと言いましたが、もちろんお菓子と関係がないわけではありません。

実は、パリへ行ったのは、あんこの炊き方を勉強するためでした。

アルザスからはるばるパリまであんこを勉強しに行くなんて、笑われてしまいそうですが、いろんな本を読んでも職人に聞いても気になるところがあって、どうしても自分の目で練り方を見たかったのです。(なお、あんこに対する私のこだわりについては、次々回のブログ更新でお分かりいただくことになりますので、今しばらくご辛抱願います。)

そこでとても心強い知り合いに連絡しました。去年パリで開店した和菓子屋さん『和楽』(仏語ではWalakuと表記します)のシェフ・パティシエ村田さんです。私の無理なお願いを優しく受け入れて下さったので、パリへ行くことにしました。

『和楽』の写真ですが、仏語版のブログのベージをぜひご覧ください。村田さんは粒餡から漉し餡、白餡まですべて手作りです。毎日、8種類ほどの生菓子を提供しています。Atelier Es の野田真紅さん(建築)と吉川英冶さん(室内装飾職人)の協力を得て作られた空間のこともあって、まるで本場の和菓子屋のようです。と言っても、フランスでしか考えられない、客の目の前で披露する「和菓子デザート」も提案しています。どら焼きをつかったとてもエレガントなデザート・アラシエットはとくに話題になっています。

当然ながら、一年もしないうちに、多くのフランス・メディアによって取り上げられています。ネットではもちろんですが、『L'EXPRESS』の新聞記者による取材と、フランスの料理雑誌『ELLE A TABLE』の3月号のものは特に著しいでしょう。


都合により、「研修先」に着いたとき、小豆はすでに「お砂糖の風呂」に浸かっていたところでした。ちょうど練りの本番が始まろうとしていたわけです。(やれやれ・・・。)




日本ならあんこに味をあっさりさせるため白双糖を使いますが、なによりフランスにあるもので和菓子を作ることを大事にしたい村田さんは手軽なグラニュー糖で作っています。

あんこ作りは少なくとも半日以上かかってしまいます。豆を圧力鍋で炊いたりすることができないのかと、すぐ楽な手を探す私が申しますと、小豆の風味がなくなるからお奨めしませんよ、と村田さん。あんこは気長に煮ていき、気長に練りあげるものです、と。和菓子の肝心なところ。

あまりにも集中していたせいか、動画の取り方が普通よりもさらに大雑把でお見せできるものはほとんどありません・・・が、一つだけご覧ください。


ローラの回転もすごいカジワラ社の餡練り機械ですが、コンパクトで火の入り方の力強さに驚きました。自動的な機能もあって、忙しい村田さんにとってはどれぐらい力強い味方かと察知することができます。








常時あんこ飢餓状態にある在外の人にとっては、たまらない風景と香り。繊細な方はご遠慮ください。


どら餡のできあがり。


おはぎ、桜の花の薯蕷饅頭・・・おまけのおやつがたくさん出ました。どれも本格派です。焼き大福は初めての試食でした。お店に出すこともあって、大変好評だそうです。温かくて歯ごたえのある焼き餅の皮と柔らかくて甘い粒餡のコントラスト、フランス人が親近感を覚えることがなんとなくわかります。





あれもこれもという和菓子についての私の疑問に、丁寧にそして夕方遅くまでやさしく応える村田さん。せっかくの休暇を使って、あんこの練り方のポイントを抑えながら教えてくださり、すっかりお世話になりました。

次の日は、前回のお話の豪華な朝食をいただいてから、再び村田さんと待ち合わせ。
今度は、パリめぐり。

しかし、村田さんのおかげで初めてパリでバスに乗りました。村田さんはバスの路線を調べることもなくすごいスピードで乗り換えます。すっかり地元の人です。



フランスで和菓子を提供する際、一番苦労するところは材料探しのようです。大きな日本食材料品を扱う問屋もありますが、和菓子用の材料なら品物の質や値段などにバラつきがあって、材料を一店でまとめて買い求めるのは、まだいろいろと難点があるようです。


いろいろな店をめぐっているうちに、有名なケーキ屋さんの前を通ってびっくりしたりすることもありました。というのも、パリのどこの辺にいるのかさっぱり分からなくなっていたからです。







『ピエール・マルコリニー』のイスター商品




『ジェラール・ミュロ』



マカロンの日の『ピエール・エルメ』の店



そうこうしていると、お昼になりました。昼ごはんは、なんとパリで餃子!




評判のフレンチ・レストランの『PASSAGE 53』の日本人シェフがとなりになんと餃子バーを開いたのです。選りすぐりの素材で作られた一種類のみですが。








餃子バーの壁に釘付け。面白い・・・これもシェフとATELIER ESの野田真紅さんが考えた内装だそうです。




今回のパリ旅行はあっという間に終わりました。


村田さんにすっかりお世話になりました。


次回は、営業中の『和楽』でゆっくりお菓子とデザートを食べてみたいと思います・・・。