2013/06/03

夢のお菓子工房 工事編(1)



アルザスはようやく春めいてきたかと思ったら、雨の日が続いてばかりですが、皆様その後はいかがお過ごしでしょうか。

大変不定期な更新には、実は理由があります。

ここ一年間、人生の新しい転換期に差し掛かり、迷いに迷ったところ、小さなお菓子工房の夢を実現させてみることにしました。

・・・

お菓子作りが楽しい!
奥が深くて毎日勉強になり飽きがこない、達成感もある。

「スキ」をモットーに仕事がしたい。
子供たちに一つの模範を見せたい

・・・

といった、鮮やかなピンク色に染まった思いが募っての決心。

お菓子の資格を取る決意からひそかにその転換期への下準備が始まっていたわけですが、さらに一つの要因が加わり、実行に及ぶことになりました。

それは・・・マイホームの購入でした。

探しに探したマイホーム。半分あきらめていたマイホームについに巡り合いました。西日の差し掛かった夕方、7月初めのときでした。

工事は確かに少々必要ですが建物が衛生的で、なんと言っても静かそうなところ。すべて希望にそったものでしたが、私の心に特にとどまったのは、一階のこの一間でした。

フランスの家の構成ではよくある「水屋」というか、洗濯物などをする部屋。





庭へ直接出入りできる部屋。








それに・・・少し潔癖症だった元の大家さんが庭仕事のあと、シャワーで靴を綺麗にし、水を流す為、地面が緩やかに傾斜しており、排水口まであるのです。


排水口(タイルの工事後)

はじめて家を見学した日、この排水口を見た時の気持ちは忘れられません。

排水口をみて興奮する人なんておかしいと(きっと)思われますが、この設備は実は、なんと言っても、お菓子工房に不可欠で大変厄介な設備の一つなのです。私はそのとき、その知識しかなかったので(そこがだめでしたが)、この殺風景な一間を見てからは夢を膨らませてばかりいました。「ここなら、小さなお菓子工房ができるのではないか」、と・・・。

数ヵ月後、いよいよマイホームに引越し、早速お菓子工房の工事を開始しました。

まずは役場での手続き。、「工事の事前申告」という手続きの義務があります。私の場合は、それは、住宅用の建物の一部を業務用に使われるようになるから、用途の変更という申告の手続きでした。

それも役場に提出するものだけでなく、家のゲートに看板を掛けて近隣に住む隣の方々に公開する義務も付いています。二ヶ月に渡って抗議がでなければまずよし(やれやれ)、ということです。


「(工事)事前申告」の看板を二ヶ月掛けないといけない義務がある。

次は、工房の設備に関して、役場の衛生課に相談に行きました。

実は、フランスは2006年から衛星規制に関して、ヨーロッパのものに従うようになりました。以前までは、それぞれの職業の衛星規制が細々と決まっていました。壁は何でできていないといけないとか、冷蔵庫の温度が何度でないといけないとか、すべての点がリスト・アップされていたらいしいですが、2006年からはころりとヨーロッパの規定にいきなり従うようになり、「市場に危険なものを送り出してはいけない」という一行に凝縮される趣旨の法律に変わり、衛生な状態を保つための手段の詳細をすべて職人たちの自由かつ責任にゆだねられることになりました。つまり、「天井には、汚れがたまらない、カビがはえない、腹水(condensation)のでない、ごみ・よがれが製造中食物に落ちないような素材を選ぶ」というような、少し曖昧な法律になったわけです。

このことは、残念ながら、工事がほぼ終わってから今頃になって、分かりました。

市役所の衛生課には、ある特定の素材・設備を使うような拘束力はまったくないらいしいですが、私は流し台が2槽式のものでないといけないとか、換気設備はオーブンとコンロの真上でないといけないとか、いろいろと押し付けられました。

法律はヨーロッパのレベルになったとしても、衛生課係はいきなり2006年からいきなりヨーロッパ人になったわけではなく、2005年と変わらないフランス人の衛生課係のままで、とても複雑な状況を生んだわけです。

おまけに、このような紛らわしい状況に、業務の方々もそれぞれ自説を展開したりして、本当に訳が判らなくなりました。(「旦那様」によると、このようなカオス的な状態がとてもフランスらしいそうですが、コメントしません。)

田舎ですから、工房の隅から隅まで工事してくれる会社もいないし、なんにせよこちらの工房もたった10平方メートルしかないので、お願いしようもないのです。一つ一つ専門会社にお願いすることになり、コーディネートすることになりました。

つづく・・・

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