2013/12/27

マジパン細工職人と出会う (お宝ビデオつき!)

ネタが少し古いと言われるかもしれませんが、去年の11月の末にストラスブール近辺へ遠出しました。それはこのブログにすでにご紹介しました、マジパン細工職人に会いに行くためでした。

自宅から1時間も離れていないのに、まったく未知の国へ行くような気分でした。

地図を 目から離せなくてかなり危ない運転でしたが、その合間に見えた景色はとても気持ちのいいもので、言ってみればとてもアルザスらしい田舎景色でした。




 
11 月中旬からよくみかける景色ですが、砂糖に使うビートの収穫時期ごろで道端に山盛りに積まれていました。あまり知られていないかもしれませんが、アルザス は実は、ERSTEINという大きな砂糖精製所があって有名です。砂糖の名前をそのまま同じにしていますが、もともとERSTEINは工場が所在する村の 名前です。





そしてたどりつきました、シルバンさんが住んでいる小さな村。








そしてようやく、シルバンさんのご自宅につきました。
アルザスの伝統的な木組みの下の石壁に目がとまりました。なかなかいい感じでしょう。実はその村には何軒か同じ構造のものがあって、地域性ではないかと思いますが、とにかく勉強になりました。

前庭は工事中でしたが、今頃できているのではないでしょうか・・・。







出迎えにきてくださったシルバンさん。





そんな時にお邪魔するのも本当に恐縮でしたが、ちょうどクリスマスを目前にして大忙しでした。

小さな、書斎みたいな設備のマジパン細工工房で少し驚きました。

以前の投稿にも書きましたが、彼のようにマジパン細工のみに専念しているパティシエはフランスの中では6人しかいません。それで、フランスの複雑な職種カテゴリーにはマジパン細工がどっちにもつかず、彼はなんと製菓部門に入らずフリー職業として活動しています。
原料を一つだけのマジパンということです。焼成も生ものも扱っていないおかげで衛生的な拘束(というか規制)はありません。また腐敗の心配はないマジパンですから、賞味期限の問題もなく、とてもとてもうらやましいです(ため息)





ずらりと並ぶマジパン細工の小物。こつこつと仕上げていくシルバンさん。このようなハイ・シーズンだと、1日最大350個まで仕上げることがある、とと言います。それもめまぐるしい毎日ですよ、と。

 クリスマスのヒーローはもちろん、サンタですね。


モーターバイクに乗っているサンタができあがるまで・・・

 ちなみに、帽子はこうやって作っています。





大きい人物だと分かりやすいです。





クリスマスは赤と緑をたくさん使う時期ですが、シルバンさんは色ごとなど綺麗に透明なタッパーで整理しています。それもずらりと!






サンタと言っても、人間ばかりでなく熊さんなど動物にも応用がきき、自由自在です。




サンタのほかには、スノーマンも登場します。





そのほか天使やなぜかアルザスの民族衣装のものやミッキーマウスのものも作ります。





そして、ブタさん!
実はドイツの影響だそうですが、年始にブタのマジパンはよくみかけます。シルバンさんはお得意のブタさんもこの時期はたくさん作っています。






ちょうど伺ったときには材料のマジパンのデリバリーがありました。シルバンさんはもちろん高質のLUBECK製のマジパンを使っています。その日は650キロの配達でしたが、一年ではほぼ3トンも使っているそうです!

ち なみに、こうやってマジパン細工だけで生計立ている職人はフランスでは6人しかいません。シルバンさんは自分のお店を持たず、マジパン細工を作る暇もない ストラスブール市とその近辺のグラン・パティシエに配達しています。誕生日の特注(ケーキに載せるマジパン)も受けていますので、いろいろと忙しいみたい です。

配達内容をチェックしているシルバンさん。もちろん配達してくれた者にはマジパンの土産を忘れず持たす本当に寛大な方です。


 



筆者もお土産いただき、写真を取る暇もなく子供たちに解体が始まりました・・・可愛かったブタさんだったのに・・・





最後になりましたが、貴重な画像をご紹介したいと思います!

実は学ぶ機会が非常に珍しい(現場しかないかと思いますが)、マジパン細工の基本とでも言える人物の体、いわゆる「四肢の体」のプロセスです。

て・足・体一つ一つ作ってくっつけるよりも出来上がりは全然綺麗です。それさえできればいろんなポーズのものができる。




少し分かりにくいかもしれませんが(一生懸命取りましたよ!)、最初は両足を作り、されらを同じ方向にそろえてから少し長めに作っておく第一本目の手を、そして難しい第二本目の手を作っていきます。

結構はまってしまいますが、たくさん練習して下さい!










 



早いもので2013年残り少なくなりましたが、どうぞよいお年をお迎えください!










2013/06/20

夢のお菓子工房 工事編(その2)


工 事はとりあえず、木の窓と扉をPVCの窓に取り替えることから始まりました。

フランスは、食品扱い空間には、基本的に(道具としても)「木製」はすべて だめになっています。木ベラはちゃんとした理由がないと使えません。まあ、窓・戸は食品接触対応のペンキで塗ってもOKだったみたいですが、取り替えるこ とにしました。






窓工事の次は、タイル工事。他の素材も「洗えるような外装」ならいいみたいですが、一番楽だと思って決定。

タイルの工事でなかなか苦労しました。

知 り合いを通して、「街の工房をたくさん作った」うわさの方に任せてしまったら、当日工事にはなんと・・・その方の弟さんが来ました!また工事の最中に、急 に二日も姿を消してしまって、三日にあえて電話してみたら、なんと「みんなインフルエンザにかかってしまって」とうそをつかれました。だって、インフルエ ンザなら道具を工事現場に取りにくるかよ、とキレる寸前でした・・・。(これも旦那様が言うには、とてもフランス人らしい態度ですが、またまたコメントし ません。)



工事材料は友人に助けてもらって選んだのですが、業務用材料屋さんのお姉さんに進められた、他のレストランで使われた滑り止めのタイルにしました。

お 姉さんのタイル、めちゃくちゃ滑り止めです・・・おかげで、夢のお菓子工房には、作業ではなく掃除が一番疲れる、箒をすべらせないぐらい滑り止めのタイル が付くことになりました。「滑り止め」の(法律的な)ニーズは、私の他に労働者がいる場合のみ、というのは後になってから分かりました。





壁をまっすぐせずにタイルをつけたため、作業台もうまく壁にくっつかなかったり、ちゃんとした機械がなかったため綺麗にきれていないタイルですが、工事のお兄さんたちがこの場を去ったとき、工事が終わったとき、ホッとしました。

これで、一番大変な山を越えたかと思ったわけです。
ところが、次は換気設備の問題がでてきました。

直 接に外につながるもので、汚れた空気の排気口が周り(隣)の窓・ドアからすくなくとも8メートルがないといけない、と衛生課が。それは衛生上の法律ではな く、住宅関係の法律ですが。それはいいのですが、急に、換気設備が完全にオーブンの正面扉を覆うような長さでないといけない、と言い出されて、てんてこ 舞。また、使おうと思った携帯用IHコンロはいつも換気扇の下でないといけない、と。すると、大分大きな換気扇が必要になります。2槽式の流し台にばかで かい換気扇に・・・作業台はどれぐらいになるのか、鮮やかなピンク色の夢から真っ黒の暗い地獄へ。

部屋が本当に狭い ので、市場(業務用の)にでまわっている換気扇だと、カバーがなんと工房の真ん中以上まででっぱることになるものばかりでした。しかし、業務用の風力でないといけな くて、長々と悩まされました。適切な機械、工事をやってくれる方を見つけるまで、何ヶ月かかったのか、覚えていないぐらいです。

そして、ある日(もちろん旦那様のいらっしゃわない日を選んで)、痛々しいことにマイホームの壁に穴を彫ることになりました。




それでも無理をお願いして最小の直径のものにしていただきました。






しかし、工事が始まるそのとき、もう一度震え上がってしまいました。

穴を彫るところを計って作業を進める工事業者を観察して、あえて聞いてみました。

- あれ、何で1メートルのところに印を付けられましたか?1、50メートルの換気扇ですから、75センチのところで掘るのではないですか?

- いや、換気扇は2メートルですよ!

- え?2メートルですか・・・


そのときは本当に、力が抜けました。
待 ちに待った(なかなか来てくれませんでした)工事でしたので、本場に言われてもなんにもいえなかったのです。やり取りがとても長くて複雑だったせいでしょ うが、私の勘違いだったのでしょうが。向こうはもちろん「いや、最初から2メートルの話でしたよ」と断固に。(これも、旦那様によると、とてもとてもフラ ンス人らしい態度だそうですが、引き続きコメントなしです。)

私はとにかくその場を去っておきました。そうしたら、数時間後には。






小さな夢のお菓子工房にばかでかい換気扇が付くようになりました!

(でも、とにかく工事は終わりました。)





水道と電気の設備はずっと前からしていただいたので、残っていたのは、天井のみででした。

それは友人が担当してくれて、2日もかかりませんでした!
























そして、照明が付くようになりました。

最後のペンキ塗りの仕事を担当いたしました。
しかし、食品接触対応のペンキって高いばかりか、とても塗りにくいです。






家とつながるドアは木製で本当は変えればいいのですが、スタンダード・サイズではないので、専用ペンキで塗り、完全にコーティングすることにしました。










































その後、機械や作業台が入りました。

そ のときにも・・・配達のとき、注文しなかったグラス張りの冷蔵庫がやってきました。いやだなあと、すぐ指摘したら、その方が高いですよ、同じ値段だったら それをもらっちゃったほうがいいのですよ、とうまい手を使ってで業務用設備の配達担当の人に騙されました。工房にはガラス張りなんて意味はないし、電気は ずっとついていて、やっぱりいやです。後に、同じ会社に相談したら、わざわざ注文のときの間違いではななく、冷蔵庫工場の間違いだったと、言われました。 客の私にとっては、結果はまったく同じでどうでもいいところですが。(この問答も、旦那様はとてもフランス人らしいといいますが、まったく賛成で す・・・)



そして、足掛け一年で、控え室やストック空間を後回しにし、ようやく完成しました。


ピッカピカの、夢のお菓子工房の出来上がり!





2013/06/03

夢のお菓子工房 工事編(1)



アルザスはようやく春めいてきたかと思ったら、雨の日が続いてばかりですが、皆様その後はいかがお過ごしでしょうか。

大変不定期な更新には、実は理由があります。

ここ一年間、人生の新しい転換期に差し掛かり、迷いに迷ったところ、小さなお菓子工房の夢を実現させてみることにしました。

・・・

お菓子作りが楽しい!
奥が深くて毎日勉強になり飽きがこない、達成感もある。

「スキ」をモットーに仕事がしたい。
子供たちに一つの模範を見せたい

・・・

といった、鮮やかなピンク色に染まった思いが募っての決心。

お菓子の資格を取る決意からひそかにその転換期への下準備が始まっていたわけですが、さらに一つの要因が加わり、実行に及ぶことになりました。

それは・・・マイホームの購入でした。

探しに探したマイホーム。半分あきらめていたマイホームについに巡り合いました。西日の差し掛かった夕方、7月初めのときでした。

工事は確かに少々必要ですが建物が衛生的で、なんと言っても静かそうなところ。すべて希望にそったものでしたが、私の心に特にとどまったのは、一階のこの一間でした。

フランスの家の構成ではよくある「水屋」というか、洗濯物などをする部屋。





庭へ直接出入りできる部屋。








それに・・・少し潔癖症だった元の大家さんが庭仕事のあと、シャワーで靴を綺麗にし、水を流す為、地面が緩やかに傾斜しており、排水口まであるのです。


排水口(タイルの工事後)

はじめて家を見学した日、この排水口を見た時の気持ちは忘れられません。

排水口をみて興奮する人なんておかしいと(きっと)思われますが、この設備は実は、なんと言っても、お菓子工房に不可欠で大変厄介な設備の一つなのです。私はそのとき、その知識しかなかったので(そこがだめでしたが)、この殺風景な一間を見てからは夢を膨らませてばかりいました。「ここなら、小さなお菓子工房ができるのではないか」、と・・・。

数ヵ月後、いよいよマイホームに引越し、早速お菓子工房の工事を開始しました。

まずは役場での手続き。、「工事の事前申告」という手続きの義務があります。私の場合は、それは、住宅用の建物の一部を業務用に使われるようになるから、用途の変更という申告の手続きでした。

それも役場に提出するものだけでなく、家のゲートに看板を掛けて近隣に住む隣の方々に公開する義務も付いています。二ヶ月に渡って抗議がでなければまずよし(やれやれ)、ということです。


「(工事)事前申告」の看板を二ヶ月掛けないといけない義務がある。

次は、工房の設備に関して、役場の衛生課に相談に行きました。

実は、フランスは2006年から衛星規制に関して、ヨーロッパのものに従うようになりました。以前までは、それぞれの職業の衛星規制が細々と決まっていました。壁は何でできていないといけないとか、冷蔵庫の温度が何度でないといけないとか、すべての点がリスト・アップされていたらいしいですが、2006年からはころりとヨーロッパの規定にいきなり従うようになり、「市場に危険なものを送り出してはいけない」という一行に凝縮される趣旨の法律に変わり、衛生な状態を保つための手段の詳細をすべて職人たちの自由かつ責任にゆだねられることになりました。つまり、「天井には、汚れがたまらない、カビがはえない、腹水(condensation)のでない、ごみ・よがれが製造中食物に落ちないような素材を選ぶ」というような、少し曖昧な法律になったわけです。

このことは、残念ながら、工事がほぼ終わってから今頃になって、分かりました。

市役所の衛生課には、ある特定の素材・設備を使うような拘束力はまったくないらいしいですが、私は流し台が2槽式のものでないといけないとか、換気設備はオーブンとコンロの真上でないといけないとか、いろいろと押し付けられました。

法律はヨーロッパのレベルになったとしても、衛生課係はいきなり2006年からいきなりヨーロッパ人になったわけではなく、2005年と変わらないフランス人の衛生課係のままで、とても複雑な状況を生んだわけです。

おまけに、このような紛らわしい状況に、業務の方々もそれぞれ自説を展開したりして、本当に訳が判らなくなりました。(「旦那様」によると、このようなカオス的な状態がとてもフランスらしいそうですが、コメントしません。)

田舎ですから、工房の隅から隅まで工事してくれる会社もいないし、なんにせよこちらの工房もたった10平方メートルしかないので、お願いしようもないのです。一つ一つ専門会社にお願いすることになり、コーディネートすることになりました。

つづく・・・

2012/12/14

ヨーロピアン・フェア わらび餅講習会とマジパン細工対練りきりの対談




フェア期間中の注目をとくに浴びたイベントが二つありました。

二つともグルメ会場で行われました。

一つは清水先生によるわらび餅の実技です。裏でこそこそと作ってみんなに味見していただく予定でしたが、グルメ会場の司会の暖かい歓迎を受けて、なんと例の立派なステージでご披露することになりました。

清水先生がきな粉を贅沢にまぶすと、会場中にたまらないきな粉の香りが広がり・・・「ピーナツ?」と司会のツェッナーさんが訊きました。言われてみれば、きな粉の香りはナッツ類の香ばしさに近いかもしれませんね。





丁寧に漉し餡をわらび餅で包む清水先生


モチという食感自体はフランス料理、ましてフランス菓子にないものですので、観客だけでなくグルメ会場に大勢集まっていた料理人たちも興味深げにこの実技を見ていました。

わらび餅の絹のような食感、そしてやさしい喉ごしは、とてもフランス人が驚いたみたいですが、いざ試食タイムになったら、大混雑で困りました。料理人の司会ツェッナーさんも自分の知り合いなどに食べさせたいと言って、10個ぐらい分けることになりました。フランス料理人、パティシエに和菓子から新しい世界が広がっていけばいいですね。和菓子にはその可能性が十分あると思います。


そして9月10日には、マジパン細工の職人との共催イベントを行いました。

せっかくアルザス製菓職人協会との繫がりができましたので、和菓子講習会だけでなく共催イベントにも挑戦してみたいと思いました。そこで、ずっと以前から心の中にあったイベントを提案してみました。練りきりの実技をするたびに、フランス人はパティシエであれ普通の人であれ「これってマジパンですか?」と尋ねるものです。

そこで、とことん似ているようで似ていない日本の練りきりとフランスのマジパン細工の技法を比較してみたら、それを軸に日本のお菓子とフランスのお菓子を対話させてみたら、きっと面白いのではないでしょうか、と慌しいフェアの準備期間中に問いかけてみました。

フランスに6人しかいない、マジパン細工で生計を立てている職人の一人である、シルパン・パルターさんはすぐ興味を示してくださいました。そして、アルザス製菓職人協会側も同じ勢いで公報などの準備に取り組んでくれました。


小さな箱にシルバンさんの作品がブースに並んでいました。


もちろん、日本をテーマとしたものもありました。


そのマジパン細工の職人、シルバンさんはその繊細な仕事柄からはとても思い浮かばないような大きな体の持ち主でございます・・・やっぱりよく言われることだそうです!

シルバン・バルターさん。梶山先生と清水先生と一緒に。


日本とフランスの職人がそれぞれ交代に扱う素材、使っている道具を紹介して、その後基本技術などの実技に入って行きました。


シルパンさんと梶山先生

司会のツェッナーさんの目の前で、日本の伝統的な鋏を紹介してから、はさみ菊のコツを教える梶山先生。

練りきりの基本技術でもあると言える「抱餡」に対して、マジパン細工の基本とでも言える「四肢の体」の実技を行っていただくことになりました。これができるパティシエは実はあまりいません。


マジパンで作る基本の「四肢の体」。後は頭をつけるだけです。



そこで、こんな技を初めて自分の目で見られた梶山先生もさっそく挑戦してみたくなりました。もちろん、マジパンではなくお馴染みの練りきりで「四肢の体」に挑戦。そこで、シルバンさんも先生の近くに寄り、とても楽しい交流が始まりました。






三肢目を出すことはなかなか難しいです。



その後、シルバンさんもはさみ菊や栗に挑戦し、一風変わった作品が出現しました。


マジパンでできた・・・はさみ菊



マジパンと練りきりの栗・・・



講習会を終えたマジパン細工の達人と練りきりの達人



アルザス製菓協会の皆さんと一緒に。10日間すっかり大変お世話になりました。

和菓子チームとアルザス製菓協会のブースの皆さん、シルパンさん。